
NAKASHIMA Asuka
中島 明日香
造形作家
大阪芸術大学環境デザイン学科卒業
2016年に地元の兵庫県養父市にUターンし、地域の失われていくモノやコトを掘り起こし、継承・保管・共有していくことをテーマとしたアートプロジェクトや、地域コミュニティの中で個人にとっての“居場所” をコンセプトとしたワークショップや即席アトリエなどの活動を行っている。
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今までの作品について
内緒の話を集め解体・再構築してできた新たな内緒の話をカルタにして遊ぶワークショップや、蚕が脱皮をするように人間も過去の自分を引きずりながら脱皮をしているのではないかということをテーマに人間の脱皮殻を作るワークショップなど、参加型の作品やワークショップなどを行なっている。
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今回のリサーチテーマ
「男山」と、桂川・宇治川・木津川の「三川合流地」という地面や風景や、文化の中心となっている「石清水八幡宮」、またそこで暮らす地域の方々にとってそれらがどのような存在であるのか会話の中で掘り出すことをテーマとしてリサーチを行いました。
とにかく人に会いたい、関わっていきたいと強く思っていたので、会う人や手がかりを見つけるためにまず駅前の喫茶店に入ってみることからはじめました。会った人の話から次に向かう場所や次に会う人を連想し動いていました。喫茶店で出会った方にはいろんなところに繋げていただいたり、滞在中観光協会からお借りしていた自転車を電動自転車にアップグレードしてもらったりなどとてもお世話になりました。 教えていただいた情報で気になった場所などをマップにポイントを打って行くと、「東高野街道」という旧街道が浮かび上がってき、代々八幡に住んでる方が多いエリアがわかり地域のざっくりとした構図などが見えてきたように思います。 -
コミュニケーションについて
滞在はじまった初日に初めて出会った講師の石川竜一さんと男山団地の部屋で共に暮らしながらリサーチを行なっていたので、石川さんが居る時は朝や晩とにかく話を聞いてくださいと聞いてもらったり話をしていました。それは割と内面的な部分の話が多かったのですが、石川さん自身が何も包み隠すことなくオープンな人だったので、私ももう開いていくしかないというか、何も隠す必要がなくなりいろいろ打ち明けていました。滞在中ひたすら心が剥き出しな状態だったなと感じます。“団地“という空間の特性もあり、2週間居ても居なくても大きく影響を受け続けていたように思います。
そういう環境をベースに置いてのリサーチだったのですが、私は八幡の町に住む方々にたくさん話を聞きたかったので、行った場所で出会った方、またその方が教えてくださった方など数珠つなぎ的に人に会い続けていました。また、先祖代々八幡の地で暮らす根っからの地元の方と、別の町から移住をし男山団地や新興住宅地に暮らす方との違いや、そこにある境界線が何なのか等が気になったので、どちら側の人にも話を聞きに行きました。
出会った人には、「石清水八幡宮はあなたにとってどのような存在か?」「石清水八幡宮があなたの中に存在するか?」というようなことをひとまず聞いてまわっていました。
その後、個人の支えになっているモノが何かを知るために日々の習慣やルーティンを質問し用意した紙に書いてもらうアンケートを数人に行いました。
そんな中で、駅の近くの飲食店に集まる地元の方々や、だんだんテラス辻本さんと辻本さんのご友人達との出会いや関わりが滞在中私の支えになったり心の拠り所になっていたなと感じます。 -
ハプニング
滞在2日目にホームシックになりました。自分でもそんな状態になるとはと驚きました。
団地にはたくさん人がいるのに自分は誰とも繋がっていないということや、上下や隣などの部屋の音や振動が自分の身体に響いてくる感覚など、普段暮らす地域や環境との違いに大きく圧倒されていました。ずっと身体が落ち着かず便秘が酷かったです。
また私は、「石清水八幡宮は町や町に暮らす人にとって、揺るぎないシンボル的な存在なのであろう。」「文化の中心的存在であり、町の人の拠り所のような存在だろう。」というとても勝手な思い込み・偏見を持って来てしまってリサーチをはじめました。そんな絶対的な存在だと思いながら「石清水八幡宮はあなたにとってどのような存在か?」と質問をしていたのですが、出会う人出会う人、「そんなに身近な存在じゃない。」「初詣は伏見稲荷に行く。」「あまりなんとも思ってない。」というような答えがひたすら返ってきました。思っていた感じと全然違うという衝撃が大きかったです。そこから「ではこの町の中心とは何なのか?」という大きすぎる問いが発生してしまい、私のリサーチは「八幡のコアを探せ!」に移行していきました。そして遭難(迷走)しました。 -
今後の展開
リサーチではたくさんの方々に出会いお話を聞くことができました。そこで私は「石清水八幡宮があなたにとってどのような存在か?」と言うことを主に質問していました。その質問の答えは先述した通りであるのですが、それとは別に語られた八幡で暮らす方々の話が私の心に大きく残っています。
ある人は話の中で他の地域から八幡に戻ってきた時に男山や三川を見ると、「帰ってきた。」とホッとする。とおっしゃっていました。また「父なる山(男山)、母なる川(三川)。」ともおっしゃっており、それらが自分にとっての“ふるさと”であるということでした。
団地に夫婦で住んでいらっしゃる女性の方は、夜遅くに帰宅した時に家の窓からだんだんテラスの大きな提灯の光が見えて安心したというように話してくれました。
他にも、子どもの頃誰かの家の側溝で友達とミニ四駆を走らせていた思い出話や、東京で暮らしていた時に八幡に帰省して電車の車窓から実家の田んぼを見て感じたことなど。
私が探していた“八幡のコア”というものは一つしかないものではなく、いくつもあるのだと感じました。八幡で暮らす人の数だけ、その人にしか見えない特別な風景があるのではないか、その集合体なのか多面体なのか多細胞のようなモノが、今の“八幡”という町そのものなんじゃないだろうかと。そういった本人にしか見ることのできない、数々の心象風景で包み込む中心部に立った時、どのようなモノが立ち上がるのか。何が見えるのか。
今後の展開としては、さらに八幡の方々と関わりながら個人の内にある心象風景を掘り起こし採集していきたいなと思っています。また2週間団地の中で暮らしていた時に体感した感覚はきっともう二度と味わうことはできないものなんだろうと思うので、それを再現することはできないかなどの実験も行いたいなと思います。 -
作品プラン
「石清水八幡宮があなたにとってどのような存在か?」という質問の答えとは別に語られた、八幡で暮らす方々の話が私の心に大きく残っている。
ある人は、他の地域から八幡に戻ってきた時に男山や三川を見ると、「帰ってきた。」とホッとすると。
また「父なる山(男山)、母なる川(三川)。」ともおっしゃっていて、それらが自分にとっての“ふるさと” であると。
団地に夫婦で住んでいらっしゃる女性の方は、夜遅くに帰宅した時に家の窓からだんだんテラスの大きな提灯の 光が見えて安心したと。
他にも、子どもの頃誰かの家の側溝で友達とミニ四駆を走らせていた思い出話や、東京で暮らしていた時に八幡に帰省して電車の車窓から実家の田んぼを見て感じたことなど。
私が探していた“八幡のコア” というものは一つしかないものではなく、いくつもあるのだと感じた。
八幡で暮らす人の数だけ、その人にしか見えない特別な風景があるのではないか、その集合体なのか多面体なのか、多細胞のようなモノが、今の“八幡” という町そのものなんじゃないだろうかと。
そういった本人にしか見ることのできない、数々の心象風景で包み込む中心部に立った時、どのようなモノが立ち上がるのか。
何が見えるのか。 -
やりたいこと
- ・八幡に住む方の心の中にある八幡の風景とその記憶、同じ風景であっても見る人が変われば見えるものが違う という意味での「心象風景」。その話を収集しテープに録音していく。
- ・団地の部屋の中で聞こえる音や、隣や上下の部屋からの振動の再現実験。
- ・インスタレーション空間に竹を使いたい。
- ・エジソンランプ 復刻させたい。(電球会社に問い合わせ中)