川口 翔平

KAWAGUCHI Shohei

川口 翔平

東京大学大学院 工学系研究科 社会基盤学専攻 修士課程
フランス国立土木学校 都市・交通・環境コース 都市計画専攻 修士課程
「都市の興味深い『点』を発見し、それをまちの人々と共有する」ことをコンセプトに、都市のリサーチ・デザイン・議論の場づくり・ワークショップ・学術研究等を、「コレクティヴ・ポイント」として行っている。 最近のプロジェクトとして、群馬県伊勢崎市に関する地震動予測データと史実を用いたワークショップ「SciREX 地震ワークショップ in 伊勢崎」(オンライン、2020年)、フランス・パリに関するインスタレーション・議論の場づくり・パフォーマンス「痛みのパリ ガラス編」(パリ、2020年)、パリの公共住宅再生事業「レ・クール・ダヴー」(パリ、2019-2020年)等がある。
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  • 今までの作品について

    今まで私が行ってきたことは、都市に関する議論の場づくり・それに関連するインスタレーションの制作・都市のリサーチ等の、都市を対象にしたプロジェクトです。
    それを、コレクティヴ・ポイントという、「都市の興味深い『点』を発見して、それをまちの人々と共有し発展させる」ことを目的に、都市に対してデザイン・芸術・研究によってアプローチするグループで行なってきました。
    その代表的なプロジェクトは、2020年2月にフランス・パリで行った『痛みのパリ ガラス編』というインスタレーション・議論の場づくり・パフォーマンスです。これは、パリという都市を「痛み」と「ガラス」という観点からリサーチした過程と結果を、ガラスと金属板からなるインスタレーションによって来場者と共有し、テーマに関する議論の場をつくりだしたものでした(ドキュメンタリー映像

    ガラスと金属板によるインスタレーション
    ガラスと金属板によるインスタレーション

    インスタレーション上で行われたテーマに関する議論
    インスタレーション上で行われたテーマに関する議論

    また、2019年から2020年にかけて、パリ20区の公共集合住宅の中庭の新しい使い方を、住民と共に考えて利用実験を行う、住民参加型・都市デザインプロジェクト「レ・クール・ダヴー」に、フランスのある建築・都市・デザインコレクティヴのインターン生として携わっていました。そこでは、都市の観点から敷地のリサーチを行うとともに、住民の方との議論の場づくりを行なったり、仮設構造物をデザイン・建設することで中庭の新たな使い方の実験を行なったりしました。

    プロジェクトで制作した 閉鎖されていた中庭を利用した子供のあそび場のためのテラス
    プロジェクトで制作した閉鎖されていた中庭を利用した子供のあそび場のためのテラス

  • 今回のリサーチテーマ

    八幡における「機能的なもの」「植物」「聖なるもの」をテーマにリサーチを行いました。

    京都:Re-Searchへの応募段階では、「男山団地に住む他国からの移住者」を対象に、「人」「家」「都市」「記録」の4つの観点からリサーチを行うことを提案していました。
    一方で1・2日目の八幡のフィールドワークを経て、男山団地の子供のあそび場や団地自体、道端に置かれていたスクラップされた車、飛行神社、エジソンの電球のフィラメントになった石清水八幡宮の竹や、松花堂弁当の発明等を見聞し、八幡における「機能的なもの」の存在に関心を持ちました。

    そこで前半の各自リサーチ期間は、その中でも特に自分が関心を持った「男山団地A地区のあそび場の遊具」を対象に、平面図・断面図による分析、遊具の詳細な観察、利用者へのインタビュー等を行いました。

    A地区の中腹にある黄色いジャングルジム:なぜかジャングルジムの下にのみ草が生えていた


    A地区の様々な遊具:いずれも下に草が生えていた

    そのリサーチ結果をユニットの信夫さんのリサーチ結果と共に解釈し、中間報告会では「『機能的なもの』が 不可触 / 聖化され 『自然』に埋もれていく」という、八幡における暫定的な発見を発表しました。
    そこでの反応を受け、後半のリサーチ期間では、私は「植物」をリサーチテーマに据え、団地内の植物に関して、コミュニティ拠点・だんだんテラスの方や住民の方へのインタビューと現地調査を行いました。


    男山団地の住民によって建物の前に植えられた植物群

    その結果を受け、成果報告展では八幡における発見を「機能的なものが 植物に埋もれていくと 聖なるものになっていく」として発表しました。

  • コミュニケーションについて

    京都:Re-Search期間中の私のコミュニケーションは、ユニットの信夫さん(A)、他の参加者の方(B)、石川さん・ゲスト講師の方・事業のコーディネーターの方(C)、そして八幡のまちの方々(D)の4種類の相手と行われました。

    A. ユニットの信夫さん

    信夫さんとは全期間を通して、密接にコミュニケーションを取りました。
    リサーチは各自で行い、そこで収集した情報をテキストとイメージの形でmiroというオンラインホワイトボードに貼り、共有しました。 その後、それらを解釈して、八幡の興味深い点を抽出し、それを用いて二人でプロジェクトを発想しました。
    中間報告会や活動報告展のプレゼンテーションや展示物も共同で制作しました。


    リサーチで得られた事実の共有・解釈を行ったオンラインホワイトボードの一部

    B. 他の参加者の方

    他の参加者の方とは、期間を通して徐々に親睦が深まりました。
    期間の前半は、新型コロナウイルスへの感染への心配から、他の方とはやや距離を取っていました。
    一方で中間報告で他の参加者の進捗状況を聞き、彼らへの関心が高まり、その後の懇親会で一人一人に自分の思ったことを伝えました。
    その後は、他の方と適宜進捗をやり取りをしながら活動報告展に至り、そこでもコメントを交換しました。
    最終的には今後も近況を交換したり、一緒にプロジェクトをしたいと思える人と知り合うことができ、良かったです。


    前半の各自リサーチ期間でのミーティングの様子

    C. 石川さん・ゲストアーティストの方・事業のコーディネーターの方

    講師の方々とは、中間報告会や成果報告展、その後の懇親会を通して、コメントを頂いたり、やり取りを行いました。
    特に、中間報告会とその後の懇親会を経て、講師の方の人となりが分かってきて、その後は適宜相談を行うようになりました。
    成果報告展が終わった後に、石川さんに進路相談をしたことが特に印象に残っています。


    活動報告展でのゲスト講師の島袋道浩さんとのやり取り

    D. 八幡のまちの方々

    リサーチの過程で、八幡のまちの方々にお話を伺ったり、成果報告展の展示物の制作を助けて頂いたりしました。
    前半のリサーチでは、松花堂美術館の方に八幡全体を案内して頂いたり、団地のあそび場で遊んでいた団地に住む小・中学生に遊具に関するインタビューを行ったりしました。
    後半のリサーチでは、男山団地の地区の居場所を形成する「だんだんテラス」を運営されている方・団地の管理/運営に携わっている方・住民の方にお話を聞くと共に、松花堂美術館の方にも展示物の制作を支援頂きました。
    アーティスト・イン・レジデンスの短い滞在期間の中で、心強い支援を頂けて、非常に嬉しかったです。
    この場を借りて、改めて感謝の気持ちを伝えたいです、ありがとうございました。


    男山団地の「コミュニティ拠点」・だんだんテラスの工房スペース

  • ハプニング

    リサーチ中のハプニングは、期間を通して少なかったと思っています。
    前半のリサーチでは、私自身のリサーチとユニットでの議論に集中しました。
    後半のリサーチでは、団地のだんだんテラスの方々と、京都:Re-Searchの中間報告の内容から、私自身がパリで取り組んだ公共集合住宅再生プロジェクト、だんだんテラスの成り立ちと運営、私の現在の研究内容まで、都市に関する様々な話題についての議論で盛り上がり、結果的に7時間議論していたことはハプニングでした。

  • 今後の展開

    活動報告展では、リサーチからの示唆を「機能的なものが 植物に埋もれていくと 聖なるものになっていく」とし、「『黄ジャン』(男山団地A地区のあるあそび場に存在する黄色いジャングルジムの通称)に 植物を生やし 聖なるものにしてみる」プロジェクト『黄ジャン様』を提案しました。


    黄色いジャングルジム、通称「黄ジャン」


    活動報告展で発表した『黄ジャン様』のイメージ

    講評を受けて、今後はまずユニットでプロジェクトのコンセプトを再考する予定です。
    私個人としては、コンセプトを「機能的なものが 不可触になり 植物に埋もれていくことで 聖なるものになる」というように再設定し、黄ジャンをまず「不可触なもの」とし、次に植物に埋もれさせるという二段階の「聖化」のプロセスを、作品として設計したいと考えています。

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