京都府南丹市美山町北村。全国屈指の茅葺き屋根の集落であるこの地区の一角に、藍染作家の新道弘之さんが二〇〇五年にオープンした「ちいさな藍美術館」がある。学生時代に藍の美しさに魅了されて以来、藍染の制作と研究に取り組み、世界各地の美術館やギャラリーの展覧会で作品を発表、国際的な活動を行ってきた新道さん。創作のかたわら世界中の藍染めの布や資料も蒐集してきた。
一階は土間の工房、二階をコレクションの展示室にした築二百年以上の歴史をもつ民家。この入り口には、新道さんが染めた布を奥さんの賀子さんがちくちくと縫って作った、愛らしい巾着や小物が並ぶ小さなミュージアムショップもある。
美山町に移り住んだ大きな理由は藍染めの工程に必要な水と灰が豊富で手に入りやすかったからだという新道さん。
「保存地区の指定を受けてから、押し寄せるように人々が訪れるようになり、少し戸惑う時もありました。でも今はとてもありがたい思いです。 観光客のためではなく、この村から、藍の文化を発信するためにと始めた美術館です。ここには、街中で展覧会を開催する時とは違って、美術の専門知識を持つ人たちだけではなく、たまたま通りがかった人たちも来てくれます。思いがけない感想を言ってくれる人がいたり、ショップに置いている作品を気に入って、何度も買い求めに来てくれる人もいます。庭の手入れも展示も看板づくりも、全て夫婦で楽しんでやっています。」
そんな言葉のとおり、身近な草花や小さなもの、普段の生活を慈しむ新道さんと千賀子さんのまなざしがうかがえるアットホームな美術館だ。

大京都アーカイブ