亀川 果野

KAMEKAWA Kano

亀川 果野

1996年 熊本県生まれ。
2020年 広島市立大学大学院 博士前期課程 日本画専攻在籍。
絵具自体の持つ物質的要素や作品の制作過程について焦点を当て制作している。

  • 今までの作品について

    私は今まで日本画を学んできて、日本画のアイデンティティという所にぶつかり、歴史の中から日本画を定義付けることは難しいと考えました。そこから、現在私たちの扱う絵具自体の質感や特性に視点を置くことで日本画という一表現方法を選択する意味を見いだせるのではないかと考え実験的に作品を制作してきました。制作する上で、日本画の特に岩絵具のもつ番数の粗ければ粗いものほど有する物質性に着目し、ひとつ限りのビジュアルが画面に固定されてしまう平面でありながら、絵画的な画面構成に特化したものではない、絵具自体の持つ物質感を通して表出する立体的、時間的要素を拾っていく意識を大切にしています。

  • 今回のリサーチテーマ

    初日から南丹全域を回らせてもらい、一番印象的だったのが川の見える風景が多いという点でした。私自身現在住んでいる場所が川と川の間に位置する町であるという川への親近感もあり、ファーストインプレッションを大事にそこにある川とそこに住む人々との関係を掘り下げていってみようと思いました。川とこの地に住む人々という視点でリサーチを進めていくなかで最もキーになると感じたのがダムについてであり、今回はそこを中心に資料や情報を集め、実際に関係した方々にもお話を伺うことができました。

  • コミュニケーションについて

    まず、こうした形態のプロジェクトでの活動をしてきたことがなかったため、今まで行ってきた取材方法や作品構想の組み立て方とはまた少し違ったアプローチが必要だと考えました。そこで私にとって最も良い刺激になったのが、今回のレジデンスで生活を共にした他のアーティストの方々とのコミュニケーションでした。2週間というそれなりの期間の中で初対面の人達と慣れない場所で共に生活をするというレアな状況下で、確執もなく作品やリサーチについて積極的に相談し情報共有が行える場があったことが本当に有難い環境だったと感じました。またリサーチの中では、日吉ダム建設前、天若の地に住んでいらっしゃった方に直接お話を聞くことができたことで資料だけでは知れない実感の伴う声の力を感じました。それ故の、その実感として力のある情報を自分の中でどう咀嚼し扱うか、という迷いもありました。

  • ハプニング

    ざっくりとしたテーマは最初に設定出来ましたが、そこからどこに焦点を当てるのか、取材内容と自分自身の表現方法や関心とどのように結びついていくのか終盤あたりまでずっと目処の立たないままリサーチが進んでいたので、リサーチ事態は楽しかったけれど、その先の落とし所がなかなか見えない不安はずっとありました。

  • 今後の展開

    川に落ちている石と普段自分が扱う岩絵具の形成過程が同じである気付きから、リサーチ期間終盤の段階では今回得た川やダムの情報をもとに、日本画の拡張版として解釈した川辺の石そのものを使用し、リサーチの中で川とダムと人々の繋がりの中に昔さかんだった鮎漁の存在がうかびあがってきたため鮎をモチーフにと考えていました。

    しかし、南丹をあとにしたその後も考えをより整理していく中で、現地の川において採取した石から絵具を精製し、作品形態としては再び平面絵画へと戻そうと考えました。そしてテーマとしてもよりダムに焦点をあてたものにしていきたいと考えています。その理由としては、今回のリサーチにより得た情報が川からの繋がりでダム関連の情報が中心であったこと、南丹の人々の暮らしと川の現在の関係においてダムの存在は一つ象徴的であると感じたことが挙げられます。また、初日に観た日吉ダムの光景から得た印象とリサーチでの情報をもとに自分との関わりを考えた時に、対象についての関心と知った時に起こる感情、そしてこれまでの表現ルーツとしてある絵画がリサーチと結びつかなければ自分がそこに訪れたことの意味が無いと感じたからでした。自然としての形成された川と人々の暮らしが形成した川、同じ川という言葉で指されるけれど両者の持つ性質は違うことをダム周辺の知識を得ながら感じました。そこに住む者と密接であった川はその歴史の中でその者達との関わり方とそれによる形態の変化を経ていまの形を成していると言えます。そうした川を通したその地の時間の経過とそれを感じる事で私自身が受けた印象を、これまで私が行ってきた日本画の制作過程と重ね、置き換える制作することで、南丹のリサーチにおいて感じた、切っても切り離すことの出来ない人の生活と川との関わりについていま一度咀嚼しアウトプットしたいと考えています。具体的には、ダムによる利水のシステムを日本画の水に関わる特性とつなげる過程込みの作品を現在構想しています。

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