牧嶋 平

MAKISHIMA Osamu

牧嶋 平

1986年埼玉県生まれ。京都市立芸術大学大学院構想設計領域在籍。旅先や日常でのささやかな気づきを手掛かりにインスタレーションを制作。今回は京都府和束町と父方の実家のある長野県下條村との印象の重なりをもとに作品を制作する。

  • 草玉を燃す

    牧嶋平は、人々の営みを「草刈り」に重ね合わせ、日々の生活に積層される感情をあらわすかのように、刈草から5mの巨大な<草玉>を制作し、民家が立ち並ぶ日常の風景を一変させた。そして会場入口のランドマークである草玉に圧倒された鑑賞者は、草のにおいに導かれるように、部屋の半分が草で覆われたインスタレーション<生活の総量>にたどり着く。その空間では、映像作品<父の草刈り>を通して、牧嶋の叔父が残した長野の家で、季節ごとに行われる終わることのない草刈りと、私たちの死ぬまで不可逆的につづく生活が重なり始める。そして「生活全体は草刈りである」と語る牧嶋の想いに近づいていく。

    鑑賞者は、1階のインスタレーションを抜け、2階に案内される。元の倉庫の様相を残した2階では、ドローイングや映像が展示され、また床板が外された隙間から1階に安置された<祖母の墓標>がのぞける仕組みになっている。そして2階の奥の映像作品<獣は死なない>は、牧嶋自信が猪の毛皮を顔に巻き、グルグルバットを行うパフォーマンス映像である。獣が自殺しない事に着目した本作は、叔父の死とそれがもたらした草刈りへと接続されていく一方、現代社会の生活にある心の淀みを、暗に問題提起していた。

    そして約300kgの刈草からできた作品群は、展示最終日のパフォーマンスをもって燃やされ完結する。その光景は、煙と共に「日々の情動」を昇華させ、また灰となって土地に溶け込み、ただ「いつもと変わらない日常」を土地にのこしていた。

    協力(敬称略)
    岡本孝介、杉本豊文、北和久(有限会社北午木材)、北昇岸田吉博(Daiken corporation株式会社)、木崎裕太(キザキ食品株式会社)、Hideto Uesugi、岡田泰典、よしだぎょうこ(金沢美術工芸大学)、吉田豊子、南唯乃、土井裕子(有田・井上文化財団/NPO五ヶ瀬川流域ネットワーク)、村田優大、太田凌嘉、京都市立芸術大学大学院構想設計領域、国土交通省近畿地方整備局木津川上流河川事務所、杉本則行(株式会社すぎもと)、杉本千枝

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