高橋 臨太郎

TAKAHASHI Rintaro

高橋 臨太郎

1991年 東京都生まれ。
東京芸術大学大学院 美術研究科後期博士課程在籍。
パフォーマンスや音楽演奏等、自身の身体によって空間に働きかける表現をする。
「スケール ヒア」(個展)(ブロックハウス 東京・2019)「そとのあそび展」(市原湖畔美術館、千葉・2018)

  • Mezzo scratcher

    今は使われなくなった織り機が並ぶ部屋で、映像作品と丹後ちりめんが展示されています。それに加え中2階はステージのようバンドセットがセッティングされています。映像を見れば忙しなく織機が稼働する工場内で、高橋と吉村機業の工場長である矢谷さんが向かい合い、互いのキーボードに手を伸ばし演奏をしている様子が映っています。ギタリストでもある高橋はちりめん織を音の観点から切り取り今回の作品を発想しました。中2階からは巨大な音が聞こえますが、実際に工場の織機の音は凄まじく、慣れていなければ数分そこにいるだけで辛くなる程です。しかしかつての京丹後では多くの人が織機を所有していたことから常に町中を音が鳴り響いており、住民達はその音に慣れ親しんでいました。あまりにも日常と化していた為、織機の音が止むと子供が泣き出した程だといわれています。高橋の作品は「互い違いに、織機の音に合わせて音楽を奏でる」ことで、そのような街の中に記憶として存在するノイズと、現在流れている時間をキーボードのノイズによって不協和音(ポリリズム)として融合させています。また、互い違いにキーボードを演奏することは「そこに暮らしている人/外からきた人」など、様々なバックグラウンドの違いからコミュニケーションが円滑にできない「難しさの面白さ」を体現しています。高橋と工場長、そして織機が奏でるノイズともつかない演奏は音楽にも騒音にも聞こえます。しかし公害とも考えられた織機の音が心地よく聞こえるように、新たな心地よさを感じることができるのかもしれません。ロックンロールやテクノミュージックさえもかつては騒音とされていたように、人が音を嗜む歴史は常にノイズとの対話によって繰り広げられてきたのです。高橋はこの街の風景、そして時代の流れをノイズミュージックによって切り取っているのです。
    展示されている丹後ちりめんの作品は、高橋と工場長がセッションした音源を元にパンチカードを制作し、ジャガードによって織られています。高橋はピアノ鍵盤の配列とパンチカードの配列に類似性を見出し本作を発想しました。丹後ちりめんがまるで楽譜のように音楽の記憶を宿しています。

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